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すね。それがまた、ずうっと男役の安寿ミラさんばっかりを見ていたお客さんが、それで今度は魅力のある女性の役をやる。生の安寿ミラの女性の魅力を見るのはこれが初めてだというと、どうしても見たくなりますよね。正直に白状しますと私は、宝塚に特別の関心はないんですけれども、ひとりの女優としての安寿ミラさんは見たいよって思いましたね。そういう人も集まって来る。

 

○山下 
そうですね。
ただ、それは非常に期間的には短いものなんですよ。今、大地真央というすばらしいミュージカル女優がいますけれども、彼女だって必ずしも何をやっても大入りかどうかということは約束できないですね。「マイ・フェア・レディ」と「サウンド・オブ・ミュージック」はよく入っても、「アイリーン」とかこの間の「エニシング・ゴーズ」はいまいちだったというようなことがありますから、お客様の動向というのは非常に読みにくい時代になっています。

 

○前田 
この人はずるいと言ったんだけれども、そのずるいというのは才能だと思うんです。つまり、意外さというのか、普通には思いつかないことをやって見せる、お客さんに体験させる。つまり意外なものを提供する。このあたりが、少なくとも「レディ・イン・ザ・ダーク」を制作したプロデューサーとしては、やっぱり成功だったわけで。

 

○山下 
そうですね。
この作品は50年ぐらい前の作品で、いわゆるノイローゼに悩む女性編集長の話なんですよ。子供のころにちょっと記憶が思い浮かばないで、非常に悩んでノイローゼになる、編集方針が決められない、そういう題材のミュージカルなんですけれども、なかなか今まで日本では取り上げるチャンスがなくて、日本のみならずアメリカでも余りリバイバルしていない。これの著作権を交渉したときに、なぜ今日本のプロデューサーがこのミュージカルをやろうとしたのか聞かせてくれと、向こうのエージェント、いわゆる著作権継承者からの質問がございました。アメリカなりイギリスなりのものは、やっぱり彼らは日本人がアメリカ以上に上演できるというふうには思っておりませんから、本国よりもいい舞台をつくるように努力しますみたいな言い方は通用しないんですね。幸い、私のでっち上げの回答がうまくいきまして上演権がとれて、非常によくやってくれたという評価をいただきました。それは、「ファニー」のときも原作者のハロルド・ロームという作曲家が記録用ビデオを見て、日本がよくこれまでやってくれたねみたいなことを言われたんです。「蜘蛛女のキス」のように、原演出、原装置を輸入して、そっくりそのままを再現する

 

 

 

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